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横田英史の読書コーナー

メタバースビジネス覇権戦争

新 清士、NHK出版新書

2022.9.16  5:58 pm

 前回取り上げた書籍に比べて、技術色が少し濃いメタバースビジネスに関する書。技術について、作り手と使い手の両方の視点から解説しているところに特徴がある。タイトルは少し盛った感じだが、数字を押さえながらロジカルに議論を進めており、中身は非常に真っ当である。ジャーナリスティックな視点もあり、筆者の言う「新たなバージョンのインターネット」の世界につい引き込まれる。メタバース入門に向く新書である。
     
 メタバースが今後成長するには、3つの環境が整う必要があるという。「持続的な仮想空間」「機能する経済」「相互運用力」である。筆者はそれぞれについて詳細に解説する。納得性は高い。既存のメタバースビジネスには厳しい目を向ける。例えばザ・サンドボックスについては「非中央集権的なメタバースとの整合がとれない」「Web2.0型のプラットフォームとほとんど違いがない『壁に囲まれた庭園』」と手厳しい。新規参入者にとって、GAFAMの壁の高さにも言及する。
      
 筆者はデジタルハリウッド大学大学院教授で、ゲームジャーナリストやVRゲーム開発会社の設立者という顔も持つ。そのためユーザー視点(オタク的とも言える)の内容を多く盛り込んでおり、読者はメタバースを楽しみたくなるだろう。かく言う評者も、すっかり置物化しているOculus Quest2(Mate Quest2)を充電して、メタバースで遊びたくなった。

書籍情報

メタバースビジネス覇権戦争

新 清士、NHK出版新書、p.235、¥968

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。