横田英史の読書コーナー
起業闘争
高杉良、角川文庫
2022.4.28 7:15 pm
ユーザー企業はソフト開発を内製化すべきという議論が喧しい。しかしその昔、日本のユーザー企業では逆の動きが活発だった。ユーザー企業がシステム部門をカーブアウト(スピンアウト)し、現在の外注中心のソフト開発に至った。なぜこうなったのか。そのヒントを得るために読んだのが、大企業のシステム部門が集団退社してベンチャーを立ち上げた実話に基づいた本書である。残念ながらヒントを見つけられなかったが、エンターテインメントとしては楽しめた。
本書は、石川島播磨重工のシステム部門の80人が集団脱藩(退社)し、ベンチャー企業「コスモ・エイティ」を1981年に設立した経緯を詳細に追う。登場人物はすべて実名なので迫力がある。リーダーとして活躍するのが碓井優である。碓井は80年代初頭に時代の寵児となった。一方のコスモ・エイティは日本のベンチャー草分けと言われる。筆者は当時、学生だったが、コスモ・エイティと碓井が大きく取り上げられていたことが記憶に残っている。もっとも、企業の置かれた環境が当時と現在とは大きく異なっており、本書が今のビジネスに役立つかは少々疑問である。
書籍情報
起業闘争
高杉良、角川文庫、p.272、¥660

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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