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横田英史の読書コーナー

電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書〜あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術〜

阿佐見 綾香、PHP研究所

2022.4.5  10:18 am

 製品企画を行うときに、どのように情報を収集し、どのように分析し、どのように企画に落とし込めば良いのかを詳細に解説した書。実用性がきわめて高い。電通のマーケティング部門の新人教育プログラムに使われているという。過剰なくらい懇切丁寧で、世に出回る“なんちゃって教科書”の類とは大きく異なる。ヒットをつくる「調べ方」やアイデアの「練り方」を知りたい方、製品企画や開発に携わる方にお薦めの1冊である。
      
 500ページを超える大著だが、図版を大きく使ったり、余白を適切に使うことで読みやすさに配慮しており、スイスイ読み進むことができる。難点を言えば、マーカーなど色使いが過剰な点は再考が必要だろう。既出の内容についてページを明示して参照する。編集や制作に手間がかかるが、読み手としては非常に助かる。アイデア出しのための40種類のテンプレートを読者に公開しているが、これも良い。本当は、これくらい丁寧に説明しないと人に物事は伝わらないのだろう。
      
 筆者が重視するのはデータの入手の仕方である。「ビッグデータは万能ではない。データを分析することばかりが注目されているが、データを手に入れる方が大事。丁寧にデータを手に入れれば、簡単な集計でも客観的な意思決定ができる」と述べる。情報収集・分析のための5つの自作ツールを読者向けに公開しているが、政府統計のポータルサイトe-Statからデータを抽出するツールは秀抜で使い勝手に優れる。

書籍情報

電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書〜あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術〜

阿佐見 綾香、PHP研究所、p.512、¥3245

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。