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横田英史の読書コーナー

EV(電気自動車)推進の罠〜「脱炭素」政策の嘘〜

加藤康子、池田直渡、岡崎五朗、ワニブックス

2021.11.8  9:55 am

 日経新聞をはじめとしたメディアで展開されているEV(電気自動車)の議論はバランスを欠き、日本の経営戦略や産業政策を誤った方向に導きかねないと糾弾した書。元内閣官房参与と自動車経済評論家、モータージャーナリストがネットによる鼎談を書籍化したもの。自動車産業の裾野の広さを指摘し、EVシフトは日本の産業や雇用に大きな打撃を与える。EVに関する底の浅い議論は見過ごせないとする。感情的なところもあるが、基本的な数字を押さえており、EVについて議論するときに参考になる。
     
 鼎談では「EVを否定するわけではない」とするものの、「議論がEVシフトとガソリン車廃止を前提としておりバランスを欠ける」「クルマのライフサイクルで見ると、必ずしもEVは環境に優しいわけではない」「EV化で日本の雇用が550万人失われる」と主張する。安易なEVシフトはEUや中国を利するだけと断じる。メディアは、EV推進派の都合の良いところを“つまみ食い”的にピックアップしており、不都合な真実を意図的に無視しておりフェアではないと危機感を募らせる。
      
 鼎談では繰り返し否定しているが、議論はかなり“トヨタ寄り”である。「現場を守れ」「日本の技術を守れ」といった現状維持の姿勢が色濃く出ている。技術の世界では、漸進的な改良に没頭してるうちに、破壊的イノベーションによってあっという間にディスラプトされることが少なくない。本書を読むと、そうした懸念が頭をもたげてくる。

書籍情報

EV(電気自動車)推進の罠〜「脱炭素」政策の嘘〜

加藤康子、池田直渡、岡崎五朗、ワニブックス、p.333、¥1650

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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