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横田英史の読書コーナー

小さな企業が生き残る

金谷勉、日経BP

2021.10.19  9:46 am

 著者が実践したAX(アナログトランスメーション)の事例を紹介した書。苦境にあえぐ地方の伝統産業の零細企業が、ビジネスを変革して再生した4つの事例、12の方策、自らの強みを見つけるための方法論で構成する。残念ながら2017年出版とあってDXは登場しないが、小回りが利く小企業がX(トランスメーション)するためのエッセンスが詰まっている。失敗事例についても取り上げていたら、本書の価値はもっと高まっただろう。
     
 著者は、今年のET&IoT Westのパネルディスカッション「ヘトヘトNIPPONからわくわくNIPPONへの挑戦」にパネリストとして登壇したデザイナー。軽妙なトークが持ち味だが、本書にも生かされている。親近感のわく語り口と抽象論に陥らない具体性が本書の特徴である。
     
 筆者は考動(考えて動くこと)と売ること、製造と販売を一体にして自社商品を作って自走することの重要性を説く。「とりあえず」で作ってはいけない。企画が感じられない商品、流通を考えていない商品、生産を考えていない商品は消えていくと断じる。

書籍情報

小さな企業が生き残る

金谷勉、日経BP、p.240、¥1229

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。