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横田英史の読書コーナー

教養としてのデータサイエンス(データサイエンス入門シリーズ)

北川源四郎、竹村彰通、内田誠一、講談社

2021.10.9  11:41 am

 東大生協の書籍売上ランキングでベストセラー(8月)だったのが気になっていた書。「導入」「基礎」「心得」の3章で構成し、データサイエンスの初学者が押さえておくべき知識を紹介する。データサイエンスの基本の基を伝える教科書としては悪くない。これからの学生にとって、最低限必要な知識なのかもしれない。さらに詳しく知りたい向きは、総務省統計局が提供する無料オンライン講座「社会人のためのデータサイエンス入門」「社会人のためのデータサイエンス演習」「誰でも使える統計オープンデータ」がお勧めである(運営はgacco)。
     
 導入編は本書のほぼ半分を占める。社会におけるデータ・AIの利活用を紹介する。ビッグデータ、SNS、検索エンジン、AI、データ解析、非構造化データの処理などの基礎を学べる。例えばビッグデータの5つのV(Volume、Velocity、Variety、Veracity、Value)、強いAI・弱いAI、相関関係と因果関係といった具合である。具体的な事例も掲げており理解を助けてくれる。
     
 基礎編ではデータリテラシについて説く。統計学の基礎やExcelの使い方などについて言及する。本書の特徴は最後の心得編だろう。AIのELSI(Ethical、Legal and Social Issues)、説明責任、透明性、トラスト、情報セキュリティ(機密性、完全性、可用性)などに言及する。特にトラストに対する論考は一読の価値がある。

書籍情報

教養としてのデータサイエンス(データサイエンス入門シリーズ)

北川源四郎、竹村彰通、内田誠一、講談社、p.240、¥1,980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。