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横田英史の読書コーナー

ジョブ型雇用社会とは何か〜正社員体制の矛盾と転機〜

岩波新書、濱口桂一郎

2021.9.30  11:36 am

 「ジョブ型雇用」をはじめとした日本の人事制度の現状と課題を論じた書。ジョブ型雇用だけではなく、同一労働同一賃金、女性雇用、外国人雇用、非正規労働、身障者雇用、長時間労働など、本書のカバー範囲は広い。タイトルはキャッチーだが、誤解を招きそうでだ。ジョブ型雇用だけでなく、日本の人事制度を俯瞰的に理解できるお薦めの1冊である。
     
 ジョブ型雇用が今、メディアを賑わしている。日経電子版には2021年1月1日から10月1日までに150本を超える記事がアップされている。筆者は12年前に、日本の雇用制度の在るべき形態を「ジョブ型」と名付けた張本人で、労働法の専門家。その筆者が、メディアは「ジョブ型雇用」の概念を間違って理解し、記事は誤りに満ちていると舌鋒鋭く断じる。
     
 筆者は、「ジョブ型に人事査定はない」「ジョブ型には配置転換はない」「職務がなくなれば解雇されるのがジョブ型」「追い出し部屋は既存のメンバーシップ型雇用に固有で、ジョブ型には存在しない」など、世の多くの浅薄なジョブ型論者が見落としている重要なポイントを指摘する。
      
 筆者にジョブ型雇用ブームは「中高年の不当な高給を是正するための動きであり、本来のジョブ型雇用を実践する気は毛頭ないご都合主義」と映る。大企業正社員型のメンバーシップのなかで育てられてきた人の思い付きで政策が進められる傾向が強まっていると危機感を募らせる。

書籍情報

ジョブ型雇用社会とは何か〜正社員体制の矛盾と転機〜

岩波新書、濱口桂一郎、p.306、¥1122

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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