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横田英史の読書コーナー

マスターアルゴリズム〜世界を再構築する「究極の機械学習」〜

ペドロ・ドミンゴス、神嶌 敏弘・訳、講談社

2021.9.14  11:28 am

 究極の機械学習アルゴリズム「マスターアルゴリズム」を作るという気宇壮大な目標を掲げた書。参考文献を含めると約500ページに及ぶ大著である。値段も少々高い。筆者は博識ぶりを発揮して、神経科学や進化物理学、物理学、統計学、コンピュータ・サイエンスを駆使してマスターアルゴリズムを追い求める。この追い込む思考実験がスリリングで興味深い。本書ではマスターアルゴリズムのほか、機械学習が我々に与える影響を、プライバシーや仕事、倫理の面から考察する。
    
 筆者は、「過去、現在、未来にわたるすべての知識は、単一の万能学習アルゴリズムによって獲得できる」と語る。話は実に壮大で、この万能学習器を構成するのがマスターアルゴリズムである。マスターアルゴリズムは5つの基幹アルゴリズムの延長にある。5つとは、記号主義者、コネクショニスト、進化主義者、ベイズ主義者、類推主義者が主張するアルゴリズムで、それぞれがマスターアルゴリズムの一つの側面を表すという。
     
 例えばコネクショニストは脳の動作原理に基づくアルゴリズム、進化主義者は進化の過程のシミュレートするアルゴリズム、ベイズ主義者は確率的推論を主張する。筆者はそれぞれの方法の長短を述べながらマスターアルゴリズムへの接近を試みる。
 筆者は、数式を極力使わず、例え話や事例(AmazonやNetflixのリコメンデーション機能、iPhoneのSiriなど)を多用して分かりやすさに配慮しているが、ある程度の予備知識を要求する内容である。筆者の考察はかなり奥深く、どこまで迫れたか少し心許なく感じる。

書籍情報

マスターアルゴリズム〜世界を再構築する「究極の機械学習」〜

ペドロ・ドミンゴス、神嶌 敏弘・訳、講談社、p.522、¥4950

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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