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横田英史の読書コーナー

NEO HUMAN ネオ・ヒューマン〜究極の自由を得る未来〜

ピーター・スコット-モーガン、藤田美菜子・訳、東洋経済新報社

2021.8.5  6:39 pm

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い余命2年と宣告された英国のロボット学者が、ITを活用して自らをサイボーグ化して延命するまでの過程と将来展望を綴った書。AIを含む情報技術やロボット技術などの進展が、スティーヴン・ホーキングとは異なるALS支援を提供可能にする。現在進行系の話であり、今後の展開も含めて実に興味深い。
   
 筆者は1958年生まれ。アーサー・D・リトルのパートナーになるなどコンサルタントとして活躍し、ベストセラーの著者にもなり、40代で早々に引退。パートナーと引退生活を楽しんでいたが、2017年にALSを宣告される。
   
 しかし、さすがはロボット学者である。QOLの向上のために、自らが選んだ医師団による手術によってサイボーグ化に踏み出す。音声合成による発声、車椅子をロボット化することによる身体の自由の確保、視線追跡によるコンピュータ入力、AIによる脳の代替、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、アバターといった情報技術を駆使する。
   
 筆者はALSの診断が下される前と後の人生を交互に紹介する。青春物語や英国初の同性婚、コンサルタントとしての活躍など、サイボーグ化以外にも読みどころはあるが、ストーリーが行きつ戻りつ交錯する展開は少々読みづらい。図や写真がなく、分かりやすさへの配慮に欠けるのも残念である。

書籍情報

NEO HUMAN ネオ・ヒューマン〜究極の自由を得る未来〜

ピーター・スコット-モーガン、藤田美菜子・訳、東洋経済新報社、p.464、¥1870

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。