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横田英史の読書コーナー

アジャイル開発とスクラム 第2版〜顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント〜

平鍋健児、野中郁次郎、及部敬雄、翔泳社

2021.7.14  12:36 pm

 ソフトウェア開発手法「アジャイル」と、アジャイル開発の1手法「スクラム」についての解説書。ソフトウエア開発だけではなく、企業経営や組織マネジメントなどにも言及する。アジャイル開発とはなにか、なぜアジャイル開発なのか、といった基本的な部分から具体的に説き起こしており理解しやすい。野中郁次郎と平鍋健児の対談を含め、ビジネス関連の第3部が示唆に富み役立ち感がある。この部分だけでも読む価値がある。
   
 事例としてはNTTコムウェア、ANAシステムズ、IMAGICA Lab.、KDDIを取り上げる。事例を含め内容がアップデートされているので、初版を読んだ方にもお薦めである。少しだが新型コロナにも言及する。ユーザー企業の経営者やシステム部門、ITのベンダーのマネジャーに向く書である。
   
 第3部は、「イノベーションのキッカケはPDCAのPから始めてはいけない。Socializaitonが出発点」「場を作って共感、共振、共鳴するプロセスが重要」「イノベーションは真剣で熱い思いを実現すること」「90年代以降の日本は分析過多、計画過多、コンプライアンス過多」など警句に溢れている。DXの迷走や日本経済・社会の閉塞感との関連など、いろいろ考えさせられる。

書籍情報

アジャイル開発とスクラム 第2版〜顧客・技術・経営をつなぐ協調的ソフトウェア開発マネジメント〜

平鍋健児、野中郁次郎、及部敬雄、翔泳社、p.304、¥2200

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。