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横田英史の読書コーナー

予測不能の時代〜データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ〜

矢野和男、草思社

2021.6.27  2:41 pm

 VUCAと呼ばれる予測不能の時代に幸せに生きるための指南書。ウエアラブルセンサーを用いて組織における人間関係を定量化する研究で知られる著者・矢野和雄が、経営論や組織論の枠を超えて人生論を展開する。易経への傾倒など、研究者というよりも思想家的な側面が出ており、好き嫌いが分かれそうだ。
   
 筆者は「未来は予測不能」であることを前提にして、幸せになることを基準に経営論や人生論を展開する。ルールや計画、標準化、横展開、内部統制では人と組織が硬直化し、予測不能な時代には機能不全に陥る。機械学習に基づくAIでは、予測不能な時代は乗り切れないと言い切る。
   
 幸福度を定量化して科学的な分析を行い、適切な処方を論じる前半部は説得力に富む。本書の後半はがらりと趣が異なる。特に第7章「格差の本質」と第8章「予測不能な人生を生きる」は矢野ワールド全開で癖が強い。

書籍情報

予測不能の時代〜データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ〜

矢野和男、草思社、p.331、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。