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横田英史の読書コーナー

スタンフォード大学名誉学長が教える ~本物のリーダーが大切にすること〜

ジョン・L・ヘネシー、瀧口範子・訳、ダイヤモンド社

2021.1.4  2:27 pm

 コンピュータ・アーキテクチャの世界的教科書“ヘネパタ”の著者の一人で、現在はグーグルの親会社であるアルファベットの会長ジョン・ヘネシーのリーダー論。ベンチャー企業MIPS Computer Systemsの創業、16年にわたる米スタンフォード大学学長の経験、ナイキ創業者フィル・ナイトと世界最大規模のネイト・ヘネシー奨学生立ち上げなどで培われたリーダー論を展開する。
   
 本書を読むと、穏やかな言葉で教え諭されている気がする。技術者らしい実直な語り口と教育者らしい抑制した筆致で、落ち着いた雰囲気を漂わす。同じ起業家の書でも、この書評で取り上げた「小さなチーム、大きな仕事」の“前のめり”な経営論と対照的である。筆者は、謙虚、真正、奉仕、共感、勇気、イノベーション、知的好奇心、ビジョン、レガシーといった項目に1章を割いてリーダーのあるべき心構えを説く。ニューヨーク進出の断念やMIPS創業時の失敗なども率直に振り返り、教訓を導き出している。
   
 年間予算が数十億ドルで、資産が数百億ドル(コストコに匹敵)というスタンフォード大学学長の仕事が垣間見えるのも本書の特徴である。音楽や美術に対するスタンスや、仕事の1/3〜1/2を寄付活動に費やしている逸話は興味深い。評者はスタンフォード大学学長に就任する前に何度かヘネシーにインタビューしているが、下手な英語の質問にも丁寧に対応してくれたのが強く印象に残っている。残念なのは翻訳が粗くイマイチなところ。編集者が手を入れた方が良かっただろう。

書籍情報

スタンフォード大学名誉学長が教える ~本物のリーダーが大切にすること〜

ジョン・L・ヘネシー、瀧口範子・訳、ダイヤモンド社、p.296、¥1870

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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