Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

予測がつくる社会〜「科学の言葉」の使われ方〜

山口富子、福島真人、東京大学出版会

2020.10.8  10:28 am

 疫学、地震学、防災人間科学、経済学、犯罪学、生命科学などの知見を用いて、「科学的予測」の社会に与える影響を科学と社会の両面から考察した書。予測が社会をどう動かすか、社会が予測にどのような影響を及ぼすかを論じる。新型コロナウイルスの例を持ち出すまでもなく、科学的(と思われる)予測が政策決定や企業の意思決定に不可欠な存在になっているだけにタイムリーな企画と言える。
  
 本書は、バイオテクノロジーやDNA型鑑定、災害予測、感染症シミュレーション、地震予測、放射線被ばくのリスクなどを取り上げる。必読なのは「数理モデル/感染症シミュレーションと政策」を扱う章である。感染症シミュレーションにおけるSIRモデルを概説し、感染症蔓延時における学校閉鎖やワクチン接種の影響、ワクチンやマスクの備蓄と感染症シミュレーションとの関係などに言及する。
  
 2019年2月に出版された書だが、新型コロナ対策における台湾と日本の姿を言い当てているのは驚きである。筆者は、台湾でのオープンデータの整備と活用、行政府の科学(IT)に対する柔軟な姿勢を取り上げる。一方で日本は、既存のルールや制度が壁となり、数理モデルの政策への活用が遅れていると指摘する。感染症予測が台湾や日本の政策決定にどのように影響したかについては、今後のパンデミックに備えるためにもしっかりと検証すべきだろう。
  
 本書は日本学術振興会の科研費を使ったプロジェクトの書籍化で、

書籍情報

予測がつくる社会〜「科学の言葉」の使われ方〜

山口富子、福島真人、東京大学出版会、p.312、¥3520

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

配信広告
配信広告