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横田英史の読書コーナー

反省記〜ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄"で学んだこと〜

西和彦、ダイヤモンド社

2020.9.15  10:15 am

 パソコンの作り手と使い手の双方が熱かった時代の雰囲気をうまく伝えた書。米Microsoftの副社長として同社興隆の礎を作り、日本でもパソコン黎明期に大活躍した西和彦が自らの半生を振り返っている。凄まじい突破力と先見性を発揮して時代を牽引したかと思えば、債務超過に陥りアスキー社長を追われたりと、毀誉褒貶の激しい半生を率直に語っており読み応え十分だ。お薦めの1冊である。
  
 西を突き動かした原動力は、大成功をおさめ大富豪になったゲイツへの対抗心だったなど、数々の裏話をきっちり書き込んでおり、歴史的な価値もある。筆者はビル・ゲイツとの出会いと友情、別離、MSXなどパソコン仕掛け人としての活躍、アスキー創刊、アスキーの債務超過と社長からの退任、CSKの大川功、京セラの稲盛和夫、日本興業銀行の中山素平などの大物財界人との交流、孫正義や古川享など同世代の人間とのつばぜり合いなど、興味深い話が満載で楽しめる。個人的には、エンジニア時代に参考にした「私だけのマイコン設計&製作」の著者・松本吉彦の名前が登場するのがとても嬉しい。
  
 本書を読んで気づくのは、米Chips&Technologyや米NexGen、4004を開発した嶋正利と立ち上げたVMテクノロジーなど、ハード(半導体)指向が強かった点だろう。ソフトウエアにこだわったゲイツと対照的である。同時代に同じ世界に生きた評者にとって、懐かしさがいっぱい詰まった書である。

書籍情報

反省記〜ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄"で学んだこと〜

西和彦、ダイヤモンド社、p.456、¥1760

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。