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横田英史の読書コーナー

免疫力を強くする~最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ~

宮坂昌之、ブルーバックス

2020.7.26  12:37 pm

 新型コロナ関連でメディアを賑わす免疫の仕組み、ワクチンとは何か、感染症ごとのワクチンの現状と問題、DNAワクチンやRNAワクチンなど最先端のワクチン研究動向、ガンの免疫治療、免疫増強食品のウソ・ホントについて分かりやすく解説した啓蒙書。マスクについてのWHOの見解が変わったり、最新の状況に追従できていない部分も存在するが、免疫の基礎を押さえるには十分である。特にワクチンの研究動向についての情報は貴重である。

 筆者が力を込めるのがワクチンの問題である。インフルエンザにはじまり、子宮頸がん、はしか、風疹、水痘、B型肝炎、肺炎球菌による肺炎などのワクチンの効用と障害が発生する確率を紹介する。副作用についての懸念に理解を示しながらも、社会的な効能とのバランスを考えるべきだと強調する。ただしワクチン接種を一方的に推奨する訳ではない。肺炎球菌による肺炎については効果が薄いとして国による助成に疑問を投げかける。このほか「感染症で自然についた免疫の方がワクチンでついた免疫よりも優れている」とする俗説を否定する。

 筆者は、ワクチンによる障害に対する日本の救済制度に疑問を呈する。厚労省が執行と監査の両方を担い、救済するかどうかの意思決定に不透明さが存在していると指摘する。ちなみに筆者によると、ストレスを抱えないスローライフやゆっくり呼吸をしながら運動すること、体温を高めることなどが、免疫力の向上に効果的という。

書籍情報

免疫力を強くする~最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ~

宮坂昌之、ブルーバックス、p.288、¥1210

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。