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横田英史の読書コーナー

搾取される研究者たち〜産学共同研究の失敗学〜

山田剛志、光文社新書

2020.4.30  5:54 pm

 産学連携や産学共同研究を悪用した企業によって搾取される大学の若手研究者やポストドクターの実態を明らかにした書。本書がカバーするのは、特許をめぐるトラブルや若手研究者に対するハラスメント、売り上げのない大学発ベンチャーの実態、割に合わない大学教授の顧問契約、研究者を守らないTLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)に代表される研究支援体制の脆弱性などである。

 筆者は大学の研究者を兼務する弁護士。不条理な話の数々は、大学の研究者からの相談に基づくという。オープンイノベーションが叫ばれるなか、耳を傾けるべき内容が多く含まれている。弁護士らしく契約書の不備も大きな問題として取り上げる。それにしても、大学の設備を無償で使い試作品を製作したり、部材の購入を強制したり、無休での労働を求めたりと、企業はやりたい放題である。

 ちなみに公正取引委員会は2019年6月に、共同研究先や取引先の知的財産権などを搾取する事例( https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jun/190614_files/houkokusyo.pdf )を公表している。大企業による優越的地位の乱用を明らかにした報告書である。本書と併せて読むといいかもしれない。

書籍情報

搾取される研究者たち〜産学共同研究の失敗学〜

山田剛志、光文社新書、p.232、¥880

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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