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横田英史の読書コーナー

御社の新規事業はなぜ失敗するのか?〜企業発イノベーションの科学〜

田所 雅之、光文社新書

2020.3.21  12:39 pm

 日米でベンチャーの起業経験をもち、現在は起業支援を行っている著者による、大企業におけるイノベーションと新規事業を成功させるための勘所。どのような心構えを持ち、どのような組織にすべきかについて論じる。クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」「ジョブ理論」などを自分なりに咀嚼し、実ビジネスに応用するための勘所を説く。図を上手に使って解説しており理解が進むのも本書の特徴。新規事業に興味のある方に向く書である。

 新規事業やイノベーションを成功に導くには、フェーズAの「イノベーションを理解する」から、フェーズDの「組織をアップデートする」に至る4フェーズで企業や経営者・社員を変える必要があると語る。特に「3階建ての組織」を実装することが大企業では重要と説く。既存事業と新規事業、イノベーションのそれぞれについて、KPIや評価基準を変えることで、出る杭が打たれることを防ぐ。

 このほか、外的環境の変化を察知するための分析フレームワーク「PEST分析」など興味深い話が多い。PESTはPolitics、Economics、Society、Technologyの頭文字である。本書のなかで繰り返し引用している、筆者の「起業の科学」(日経BP刊)を併せて読むと良さそうだ。

書籍情報

御社の新規事業はなぜ失敗するのか?〜企業発イノベーションの科学〜

田所 雅之、光文社新書、p.280、¥924

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。