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横田英史の読書コーナー

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史〜史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」〜

日経コンピュータ編集、日経BP

2020.3.5  1:31 pm

 みずほフィナンシャルグループ(FG)が開発を進めてきた新勘定系システム「MINORI」が生まれるまでの悪戦苦闘を追ったノンフィクション。IT系の老舗専門誌・日経コンピュータらしい取材力で読み応え十分だ。専門誌の書籍には珍しく週刊文春の書評で取り上げられたり、Amazonでベストセラーになっているのもよく分かる。本書が強調するのは、企業の情報化における経営層の関与の重要さである。「2025年の崖」やDXが叫ばれるなか、多くの方にお薦めできる。

 みずほ銀行で思い出すのは2回の大規模システム障害。第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行統合時の経営判断ミスと、東日本大震災時に義援金払い込み集中によって引き起こされた。本書はその根本原因を明らかにするとともに、それが4000億円超(東京スカイツリーの建設費の7本分)が投じられた「MINORI」にどのように生かされているかを丹念に追っている。大規模システム障害時の記述は現場感が漂っており迫力十分である。

 なお評者は1回目のシステム障害が起こったときの日経コンピュータ編集長。そのときに活躍した記者が本書で中心的な役割を果たしている現在の編集長である。それだけに本書に思い入れがあることを断っておきたい。

書籍情報

みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史〜史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」〜

日経コンピュータ編集、日経BP、p.256、¥1980

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。