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横田英史の読書コーナー

IT業界の病理学

司馬紅太郎ほか、技術評論社

2019.11.12  10:04 am

 主にエンタープライズ系システム開発を手がけるIT業界の宿痾を紹介した書。IT業界にける失敗プロジェクトの“あるある”を分析し、病気の症状と影響、原因と背景、治療法、予防法を簡潔にまとめている。組込み業界とIT業界はともにソフトウェアやシステムの設計と開発を手がけるが、言葉が通じなかったり、お互いの実態を知らないケースも少なくない。IoTの技術やソリューションの進展によって組込みとITがぐっと接近している現在、本書には組込み業界の人間が知っておいて損はない「IT業界の実態」についての情報が詰まっている。

 本書は開発、レビュー/テスト、保守・運用、マネジメント、業界と大きく5つの分野に分けてIT業界の病理を解説する。例えば開発の章では「なんちゃってアジャイル症候群」「絶対にさわれないソースコード」、レビュー/テストでは「メールレビューという名のアリバイ作り」、保守・運用では「『運用でカバー』症候群」、マネジメントでは「永遠の進捗90%」「失敗だらけのPoC」といったタイトルが並ぶ。筆者は現役の設計開発者やコンサルタント。話は具体的で分かりやすい。

書籍情報

IT業界の病理学

司馬紅太郎ほか、技術評論社、p.176、¥1848

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。