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横田英史の読書コーナー

行動経済学の使い方

大竹文雄、岩波新書

2019.10.20  9:58 am

 行動経済学から得られる知見をどのように生かせばよいかを具体的に解説した書。自由な選択を確保しつつ、人々を適切な行動に誘導したり、人々のより良い意思決定につなげる「ナッジ」の作り方を明らかにする。仕事や健康、行政における応用例は具体的で、行動経済学についての理解が進む。ナッジ設計のチェックリストも役立ち感がある、ちなみにナッジとは、「選択を禁じることも、経済学的なインセンティブを大きく変えることもなく人々の行動を予測可能な形で変える知恵と工夫」である。

 筆者はまず、行動経済学の基礎を紹介する。行動経済学をざっと復習するにはちょうどいい。ある程度知っている方は読み飛ばしても問題ない。紹介するナッジは極めて具体的である。例えば仕事については、労働意欲を高めるナッジ、労働時間を短縮するナッジ、長期失業をなくすナッジ、女性取締役を増やすナッジ、長期目標を達成するナッジなどが並ぶ。行政では自然災害時の予防的避難のナッジや租税のナッジ、健康・医療関連ではがん検診受診率向上のナッジや治療法選択のナッジ、ジェネリック薬品利用促進のナッジ、臓器提供のナッジなどを紹介する。

書籍情報

行動経済学の使い方

大竹文雄、岩波新書、p.224、¥902

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。