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横田英史の読書コーナー

東京貧困女子。〜彼女たちはなぜ躓いたのか〜

中村淳彦、東洋経済新報社

2019.9.12  3:04 pm

 日経朝刊の春秋欄でも取り上げられた、東京で暮らす女性たちの貧困を扱ったノンフィクション。本書は東洋経済オンライン連載「貧困に喘ぐ女性の現実」をベースに単行本化したもの。編集部に送られてきた投書を編集担当者と筆者らが選別し取材先を選んでいるので、バイアスがかかっているのは否めない。普遍的とは言えないものの、東京における女性の貧困の一面を切り出しているのは事実である。女子大学生の貧困を取り上げたインタビューの内容には驚かされる。筆者は「日本は本当におかしくなっている」と嘆くが、その気持はわかる。

 筆者は、奨学金や非正規雇用、低賃金の介護現場、情報リテラシの低さが生む貧困の連鎖など、日本社会の根深い問題に切り込んでいる。それにしても学費の高騰や生活費の高さによって、東京で学生が普通の暮らしを送るのがこれほど大変だとは…。

 学生以外の貧困の原因は様々である。離婚、家庭崩壊、精神疾患など、まったく未来が見えない状況を筆者は浮き彫りにする。筆者が嘆くように、真面目な女性ほど苦しむ、真面目な人がとことん損をする社会は確かにおかしい。

書籍情報

東京貧困女子。〜彼女たちはなぜ躓いたのか〜

中村淳彦、東洋経済新報社、p.350、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。