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横田英史の読書コーナー

世界を動かすイノベーターの条件〜非常識に発想し、実現できるのはなぜか?〜

メリッサ・A・シリング、染田屋茂・訳、日経BP

2019.8.19  11:34 am

 8人のイノベーターの生涯を詳細に調べ上げ、性格や能力はどこが通常の人間と違うのか、イノベーターが誕生する環境・条件とは何か、などを探った書。扱うのは、スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスク、ディーン・ケーメン(セグェイの発明者)といった現代のイノベーターのほか、アルバート・アインシュタイン、ニコラ・テスラ、マリー・キュリー、トマス・エジソン、ベンジャミン・フランクリン。8人に対する調査がどこまで敷衍できるか定かではないが、イノベーション研究の筆者の展開する議論はなかなか説得力がある。

 筆者はイノベーターの要素として8つを挙げる。規範やパラダイムを疑問視する「孤立意識」、一人になる時間をもつこと(独学・孤独)、自己効力感(目標を必ず達成できるという並外れた自信)、壮大な夢(高遠な目的)を抱く、プロセスを楽しめる仕事をみつける(仕事が一番の喜び)などである。筆者の指摘を守ればイノベーターが生まれるわけではないが、なぜ日本でイノベーターが生まれづらいかを考えるヒントとして役立つ。

 この書評では、類書として「天才のひらめき〜世界で最も創造的な人びとによる13の思考ツール〜」を取り上げたが、現代に生きるイノベーターを多く取り上げている本書のほうが、腑に落ちる感が強い。「イノベーションとは1000のアイデアにノート言うことだ」(ジョブズ)、「不可能だと言うな。自分にできないと言ってくれ」(ケーメン)など、取り上げているイノベーターたちのコメントも含蓄があって興味深い。

書籍情報

世界を動かすイノベーターの条件〜非常識に発想し、実現できるのはなぜか?〜

メリッサ・A・シリング、染田屋茂・訳、日経BP、p.336、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。