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横田英史の読書コーナー

移民とAIは日本を変えるか

翁邦雄、慶應義塾大学出版会

2019.8.13  11:31 am

 移民(外国人労働者)とAIが日本社会と経済に与える影響について解説した書。欧州の経験、日本の現状、外国人労働者急増の主役となっているベトナムの事例、AIと移民の共通点と相違点、今後の課題について論じる。労働人口減少をAIで補えるのか、AIは人間から職場を奪うのかについても明快に答える。ドイツの移民政策の失敗を踏まえ、日本における外国人労働者受け入れの策の安易さに警鐘を鳴らしている。データに基づいた議論には安定感がある。テーマの選定が時宜を得ており、一読をお薦めする。

 日本の現状について、犯罪、国際結婚、失踪問題、宗教、日本人観といった切り口でデータに基づき分析する。AIは労働環境の2極化を招くものの大失業が発生することはない、労働人口減少の方がAIによる労働力代替よりも53%も経済に与えるは大きいと語る。

 日本は移民受け入れの体制づくりが不十分だと断じる。勝手な思い込みによって失敗したドイツと同様の状況が日本で生まるリスクを抱え、将来、強い社会的軋轢をもたらす可能性を指摘する。ディアスポラ(ホスト国に同化せず出身国に対する強い親近感をもった移民集団)が問題になっているなか、世界的には統合(integration)ではなく包摂(inclusion)が重要になっているという。

書籍情報

移民とAIは日本を変えるか

翁邦雄、慶應義塾大学出版会、p.224、¥2160

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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