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横田英史の読書コーナー

グーグルが消える日 Life after Google

ジョージ・ギルダー、武田玲子・ 訳、SBクリエイティブ

2019.7.27  10:42 am

 「テレコズム」や「テレビが消える日」で知られる経済学者・未来学者のジョージ・ギルダーの新著。グーグル的なウィナー・テイク・オールで中央集権的な世界は終焉を迎え、ブロックチェーンをベースにした分散コンピューティング(ピア・ツー・ピア)の世界が間もなくやって来て、人間がインターネット上で尊厳を取り戻すと主張する。雑誌への寄稿をまとめたような雑駁な議論の進め方やブロックチェーンへの極端な肩入れが気になるものの、ITやインターネットの将来像を考える上で一つの見方を示しており一読の価値がある。翻訳がイマイチでこなれていないのは少し残念である。

 筆者は、アルゴリズムに頼ったAIが人間の頭脳を廃れさせると警鐘を鳴らす。グーグルに対しては、「人間を自社のアリゴリズムよりも知的レベルが劣る存在と位置づけている」と徹底的に批判する。ブロックチェーンがインターネットのアーキテクチャを抜本的に変え、個々のニーズに合わせることができる分散型のスーパーコンピュータが実現すると主張。

 データーセンターに集約されたクラウドコンピューティングから、ブロックチェーンリンクに移行し、5Gの通信がこれを支えるという構図を描く。グーグルやアマゾンをはじめとした大手IT企業の巨大データサイロに閉じ込められてきたコンテンツは、デジタル権利管理を取り込んだインターネット上に分散する。クラウドコンピューティングから透明度が高く変化にも対応できるスカイコンピューティングへの移行を予測する。

書籍情報

グーグルが消える日 Life after Google

ジョージ・ギルダー、武田玲子・ 訳、SBクリエイティブ、p.424、¥1944

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。