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横田英史の読書コーナー

フェイクニュースを科学する〜拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ〜

化学同人、笹原和俊

2019.2.4  1:16 pm

 フェイクニュースはどのように生まれ、どういった過程を経て拡散するのかを、社会科学だけではなく、学際的な計算社会学(コンピュータが可能にする人間行動と社会的相互作用に関する学問)を用いて分析した書。情報を信じてしまう人間の認知特性、その情報を拡散させる情報環境の特徴、情報過多と注意力の限界など、フェイクニュースを「情報生態系(Information Ecosystem)」の問題としてとらえ、生態系の全体像を描く。筆者はメディアリテラシーとファクトチェックは、どちらもフェイクニュース時代を生き残るための基本だと語る。200ページ未満とコンパクトにまとまっている本書は、メディアリテラシを高めるために読んで損はない。

 偽ニュースは速く遠くまで、深く幅広く拡散する。特に怒りや道徳に結びついた感情の情報は感染力が強い。道徳感情語が一つ増えるごとに、リツィートされる確率が20%増加するという。誤った情報がリツィートされる確率のほうが断然高い。逆に正しいニュースにはこうした破壊力がない。結局、フェイクニュースを修正しても、読者へのインパクトは限定的になる。

 人間には見たいものだけを見る確証バイアスがある。見たいものしか見えない情報生態系が、この確証バイアスに輪をかける。さらに認知バイアス、バンドワゴン現象、同調圧力などが、フェイクニュース拡大を助長する。嘘がこだまするエコーチェンバーの話も興味深い。

書籍情報

フェイクニュースを科学する〜拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ〜

化学同人、笹原和俊、p.192、¥1620

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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