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横田英史の読書コーナー

エンジェルフライト~国際霊柩送還士~

佐々涼子、集英社

2013.9.3  12:00 am

 海外で亡くなった邦人の遺体や遺骨を日本に搬送したり、海外から運ばれてきた遺体に防腐処理などの適切な措置を施し遺族のもとに送り届ける会社「エアハース・インターナショナル」の活動を追ったノンフィクション。2012年の開高健ノンフィクション賞を受賞しているが、その理由がよく分かる良書である。ノンフィクション好きの方に強くお薦めしたい。そうでない方も読んで損はない。
 知られざる国際霊柩送還士と呼ぶ職業自体も興味深いが、本書が取り上げるエアハースの社員たちも実に魅力的である。エアハース設立までの経緯、社員が国際霊柩送還という職業を選んだ理由、社員それぞれが背負った人生を筆者は丹念な取材で明らかにする。ノンフィクションらしいノンフィクションで読み応え十分だ。
 もう一つの読みどころは日本人の死生観である。身近な人間の突然の死に対する日本人の反応や遺体に対する思いを、本書はエアハースの仕事ぶりを通して明らかにする。感動的なエピソードが多く、不覚にも涙ぐむことになりかねない。電車のなかで読むのは要注意である。

書籍情報

エンジェルフライト~国際霊柩送還士~
佐々涼子、集英社、p.288、¥1,575

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。