横田英史の読書コーナー
素晴らしきラジオ体操
高橋秀実、草思社文庫
2013.5.31 12:00 am
ラジオ体操といえば思い出すのが小学生の夏休み。眠い目をこすりながら、6時30分に近所の公園に集まった記憶をお持ちの方は多いだろう。最近では、公園で日常的にラジオ体操をしている高齢者の姿を見ることが多くなった。本書は、そんなラジオ体操の誕生と発展、現状をとことん追ったノンフィクションである。実は米国が発祥だったという歴史も面白いが、読み応えがあるのはラジオ体操会場における人間模様だろう。筆者はラジオ体操会場に3年通い、メンバー(多くは高齢者)へのインタビューによって真髄を浮き彫りにしている。書き口は軽妙でつい引き込まれる。肩の凝らない内容なので、出張のときや旅のお供にお薦めの1冊である。
世界初のラジオ体操は、米国のメトロポリタン生命保険の発案によるもの。1925年(大正14年)に自社ビルのスタジオからラジオ体操の放送を早朝6時45分から20分間に流した。「死の換金」「死を待つ不吉な商売」といった暗いイメージの生命保険を、明るく生き生きしたものにするというのがメトロポリタン生命保険の戦略だったという。この米国初のラジオ体操を日本に紹介したのは逓信省の役人。昭和3年に日本でのラジオ体操の放送が始まった。ちなみに当時の体操の図解と録音が残っており、今でも復元できるのは凄い。
本書で秀抜なのはラジオ体操会場で繰り広げられている老人たちの生態を生き生きと描いているところ。縄張り争いやハイアラキー、ほとんど信仰と化したラジオ体操への思いなど面白い話題がてんこ盛りである。
書籍情報
素晴らしきラジオ体操
高橋秀実、草思社文庫、p.250、¥714

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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