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横田英史の読書コーナー

焼かれる前に語れ~司法解剖医が聴いた、哀しき「遺体の声」~

岩瀬博太郎、柳原三佳、WAVE出版

2013.4.9  12:00 am

 千葉大学 法医学教授の司法解剖医とノンフィクション作家が日本における検死制度の問題を告発した書。日本で発生する年間15万体の「変死体」のなかで、司法解剖されるのはわずか5000体に過ぎない。変死体は多くの場合、病死で片づけられてしまう。暴行死や保険金殺人、子供の虐待死、医療ミスによる死亡なのに病死で済まされることが少なくないことを、誤認の事例を数多く挙げて明らかにする。教えられることの多い書である。
 日本の検死体制はあまりにも貧弱というのが著者の主張だ。人員や予算、施設の不足、法整備が遅れおり、検死や解剖現場は崩壊寸前だと警鐘を鳴らす。死体解剖に対する国家予算は貧弱で実費さえ出ない。この結果、薬物・毒物の検査ができない、鑑定書が書けない、すべての部位を解剖したことにしたり臓器を保管せずに採算を合わせる、鑑定医が少なく鑑定の質を担保できないといった事態を招いている。日本の現状は惨憺たる状況である。
 しかも都道府県によって法医解剖の比率に大差がある。県に行政解剖の予算がないという理由から、死因究明のための検査を経ず荼毘に付されてしまう。死者の人権はすっかり無視される。筆者は、国家や法制度、警察といった権力だけではなく、遺族への思いやりに欠け傷つけている、自らが属する司法解剖医の問題点も指摘する。

書籍情報

焼かれる前に語れ~司法解剖医が聴いた、哀しき「遺体の声」~
岩瀬博太郎、柳原三佳、WAVE出版、p.240、¥1,575

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。