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横田英史の読書コーナー

調理場という戦場~「コート・ドール」斉須政雄の仕事論~

斉須政雄、幻冬舎文庫

2013.3.15  12:00 am

 三田にある有名フレンチ・レストラン「コート・ドール」のオーナーシェフ・斉須政雄が、フランスでの修行時代の思い出や料理哲学を綴った書。料理哲学は人生哲学につながっており、含蓄のある内容が豊富で読み応えがある。エピソードの一つひとつが味わい深く、読み終わったあとに満足感が残る。万人向けの内容だが、とりわけ若い方にお薦めしたい。ちなみに本書を推薦してくれたのは、京都・三条京阪近くの中華レストランのシェフ。もともと東京で自動車のセールスマンをしていた彼が料理の道に進んだのは、本書から影響を受けたからという。確かに、それだけのパワーを秘めた良書である。
 筆者の斉須は23歳でフランスに渡る。来日したフランス人シェフに誘われて修行に出るのだが、選ばれたキッカケについてのエピソードが“ちょっといい話”である。フランスに行くものの、フランス語は話せず、最初の住まいは屋根裏部屋。厳しい環境からスタートするが、数軒のレストランで修行し腕を磨く。食はもちろん“住”についての考え方は少々ユニークで興味深い。レストランの個性的なオーナーたちの仕事ぶりやビジネス観、同じ職場で働く料理人たちとの確執など楽しめる。本書を読むと、会社の近くにあるコート・ドールの厨房をちょっとのぞいて見たくなってしまう。

書籍情報

調理場という戦場~「コート・ドール」斉須政雄の仕事論~
斉須政雄、幻冬舎文庫、p.283、¥630

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。