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横田英史の読書コーナー

デフレーション~日本の慢性病"の全貌を解明する~

吉川洋、日本経済新聞出版社

2013.3.1  12:00 am

 デフレーションの多角的に論じた書。最近話題のアベノミクスだが、肝はデフレ経済を克服するための金融緩和措置である。本書はアベノミクスの理論的裏付けとなる貨幣数量説を歴史を踏まえ徹底的に批判している。時宜を得た書といえる。本書を読むと、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言をつい思い起こしてしまう。
 評者は中学校時代に、デフレは起こらないと習った覚えがある。そのデフレに日本は陥った。筆者は冒頭でデフレについての問題意識についてこう述べる。「戦後、先進国が経験したことにないデフレーションに、なぜ日本は陥ったのか。田の国々では低インフレとはいえデフレではないのに、なぜ日本だけがデフレなのか。デフレを止めるには何をなすべきなのか、するべきだったのか。ゼロ金利の下でも、貨幣数量を増やせば、デフレは止まるのか」。本書は専門的な部分もあるが、全体的には平易に経済学を解説している。数式を使った理論の部分は読み飛ばしても支障はない。

書籍情報

デフレーション~日本の慢性病"の全貌を解明する~
吉川洋、日本経済新聞出版社、p.236、¥1,890

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。