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横田英史の読書コーナー

レッドアローとスターハウス~もうひとつの戦後思想史~

原武史、新潮社

2013.1.18  12:00 am

 この書評で2008年に取り上げた「滝山コミューン 1974~戦後とは何か? 自由とは何か?~」の著者が、対象を同じく西武沿線のひばりが丘団地に移して戦後の政治社会を追った書。西武沿線、東急沿線、中央線沿線を随時比較しながら話を進める。滝山コミューンの主役は全共闘世代の教員と滝山団地に住む児童、その母親たちが中心となって作った地域共同体だったが、本書は共産党と堤康次郎、住民運動を軸に当時の世相を描いている。「滝山コミューン」と同様、「そんなこともあったねぇ」と右肩上がりでバイタリティにあふれていたあの頃を思い出したい方にお薦めである。
 タイトルになっているレッドアローとスターハウスとは何か。前者は西武鉄道が池袋-秩父間を走らせた特急電車の名称である。後者は日本住宅公団が作った星型(Y字型)の外見を持つ住宅のこと。いずれも乗客や応募者があふれるほど人気を博したという。この二つを象徴に、西武沿線の戦後思想史を浮き彫りにする。
 本書が扱う世相は多岐にわたるが、大きく西武鉄道(堤康次郎)と東急電鉄(五島慶太)の対比、共産党の興隆と衰退、住民運動、反米活動、モータリゼーション、流通(デパートやスーパー)の進展、レクリエーションといったところである。いずれもあの時代を感じさせ懐かしい。

書籍情報

レッドアローとスターハウス~もうひとつの戦後思想史~
原武史、新潮社、p.396、¥2,100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。