AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井紀子、東洋経済新報社

 2011年に始まった東大合格を目指す AI プロジェクト「東ロボくん」のプロジェクト・リーダーを務める著者が、AI の限界を説いた書。冒頭から、「AI が神になる」---なりません、「AI が人類を滅ぼす」---滅ぼしません、「シンギュラリティが到来する」---到来しません、と挑戦的である。人間の知的活動のすべてが数式で表現できなければ AI が人間に取って代わることはないと断じる。

 

 一方で著者は、日本の教育がこのままでは仕事は確実にロボット(AI)に奪われると警鐘を鳴らす。もともと歯切れのよさが筆者の持ち味だが、さらに磨きがかかったようだ。百家争鳴で玉石混交の AI 論議のなかで、一読に値する良書である。

 

 前半部の AI 談義も悪くないが、本書の読みどころは日本の教育を案じる後半部である。全国2万5000人を対象にした読解力調査で、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できないという、中高生の読解力の恐るべき実態が判明する。筆者は数々のデータを挙げて議論を展開するが、いずれも背筋が寒くなる内容である。多くの人が、AI に対して人が優位に立てるはずの読解力で、十分な能力を身に着けていない。日本の労働力の質は、実力をつけてきた AI の労働力の質に似ている。日本の教育で育てているのは、AI によって代替可能な能力ばかりだと、筆者は危機感を募らせる。

 

 ちなみに冒頭で紹介した東ロボくんはセンター試験模試で、5教科で総合偏差値57.1の成績をマークした。東大は無理でも、MARCH なら楽勝で合格するレベルに達しているという。

書籍情報

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井紀子、東洋経済新報社、p.287、¥1620

 

横田 英史 (yokota@nikkeibp.co.jp)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。
日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現IT Pro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。
2003年3月発行人を兼務。2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。
その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月から日経BPコンサルティング取締役、2016年3月から日経BPソリューションズ代表取締役社長を兼務。2018年3月退任。2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所グリーンテックラボ主席研究員、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組み込み制御、知的財産権、環境 問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。

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