横田英史の読書コーナー
BAD BLOOD〜シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相〜
ジョン・キャリール、関美和・訳、櫻井祐子・訳、集英社
2021.3.29 2:57 pm
指先に刺した針から1滴の血液を取るだけで、数多くの項目の検査ができると喧伝したベンチャー・米セラノス(Theranos)の捏造スキャンダルを扱ったノンフィクション。不正を暴いたウォール・ストリート・ジャーナルの記者自らが執筆している。裏付けをとるためのスリリングな過程も明らかにしており楽しめる。米国で長らくベストセラーだったが、ようやく日本語訳が出版された。「大きな嘘ほどだまされやすい」を地で行った話であり、ノンフィクション好きにはお薦めである。
主人公はスタンフォード大学を中退してセラノスを立ち上げたエリザベス・ホームズ。このホームズに多くの著名人が騙された。セラノスの社外取締役に就任し宣伝に利用された面々は豪華絢爛である。レーガン政権の国務長官だったジョージ・シュルツ、クリントン政権の国防長官だったウィリアム・ペリー元国防長官、ニクソン政権とフォード政権の国務長官だったヘンリー・キッシンジャーなど目眩がするほどである。
残念なのはセラノスを告発する面々の取材は緻密だが、主役であるエリザベス・ホームズの人物描写が不足しているところ。「声が異様なほど低い」「スティーブ・ジョブズを真似て常に黒のタートルネックを着ていた」など表面的な話に終始しており少々物足りない。
書籍情報
BAD BLOOD〜シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相〜
ジョン・キャリール、関美和・訳、櫻井祐子・訳、集英社、p.416、¥2090

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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