横田英史の読書コーナー
パンデミックとたたかう
押谷仁、瀬名秀明、岩波新書
2020.3.10 1:33 pm
2009年の新型インフルエンザ蔓延を踏まえ、ウイルス感染症専門の東北大学大学院教授と「パラサイト・イヴ」で知られるSF作家・ホラー作家が「人類(日本)はパンデミックにどのように対応すべきか」を語り合った書。インフルエンザ蔓延中(厚生労働省が終息宣言を出したのは2010年3月)の2009年11月に出版された新書だが、医療崩壊や学級閉鎖、クラスターの問題などを取り上げており、古さを感じさせない。今後も予想される新型感染症に立ち向かうために読んで損のない書である。
Wikipediaによると、このインフルエンザは豚由来で、2009年春から2010年3月ごろにかけて流行しWHOは2009年6月にパンデミックを宣言した。本書で押谷は、「専門家の意見がきちんと決断に反映されていない」と日本の感染症の危機管理の立ち遅れを指摘する。同時に強調するのが、リスク・コミュニケーションの重要さ。医療的な対策とともに、社会心理学的な対応が不可欠だと指摘する。政府と自治体の間のリスクコミュニケーションなど、残念ながら過去の教訓は今回の新型コロナウイルスには十分に生かされなかったようだ。ちなみにWHOのリスク・コミュニケーションでは、過度に安心させることは厳禁で、「大丈夫だと言ってはいけない」とされているという。
この書評を書いている時点でAmazonで売り切れになるなど入手困難になっている(古書としては入手可能)。評者はたまたま在庫があった丸善丸の内本店に取り置きして入手したが奥付は第1刷り。いまさらだが、良書なのにあまり読まれなかったのは残念である。
書籍情報
パンデミックとたたかう
押谷仁、瀬名秀明、岩波新書、p.173、¥770

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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