横田英史の読書コーナー
新書 世界現代史〜なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか〜
川北 省吾、講談社現代新書
2026.3.24 8:35 am
筆者は現在の世界情勢をこう語る。ーーー今、力が信義をなぎ倒す荒野にいる。「強者は好きなように力を振るい、弱者は耐えるしかない世界である」。権威主義者が牙をむき、攻守逆転を狙う「レコンキスタ(失地回復)の時代」ーーー。トランプ、プーチン、習近平など権威主義者が跋扈し、帝国主義的な侵略行為が続く世界の状況を、共同通信社の国際ジャーナリストが鮮やかな切り口で読み解いた書である。
キーワードはレコンキスタ(失地回復)。オバマの「米国は世界の警官ではない」(2013年9月)発言を契機に、ロシアのクリミア併合(2014年3月)、中国の南シナ海埋め立て(2014年12月)と続くレコンキスタの動きに繋がったと筆者は分析する。オバマが送った“悪いシグナル”が、プーチンや習近平の野心実現への誘い水になったと語る。
本書は、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)な国際政治の情勢について頭を整理することのできる書である。ベストセラーになっているのも納得できる。全体に参考になる書だが少々懸念もある。通信社の記者らしいすっきりした議論展開は非常に分かりやすいが、魑魅魍魎の世界政治があまりにも単純化されているのではないかといった違和感も残る。
筆者は世界情勢を多角的に分析する。冷戦が終わり“無敵”となった米国で多くの問題が吹き出した。格差の拡大はもちろん、「何をしても許される」と帝国主義的な傲慢さと思い上がりが米国を覆った。ロシアではプーチンが「大ロシア」再興の野望を隠そうとせず、習近平は中華民族の偉大な復興で暴走する。グローバルサウスは力をつけ、欧米との格差是正に動く。さらにSNSによる情報工作が民主主義の脅威となる、といった具合だ。
書籍情報
新書 世界現代史〜なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか〜
川北 省吾、講談社現代新書、p.328、¥1320

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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