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横田英史の読書コーナー

アメリカの中東戦略とはなにか〜石油・戦争・同盟〜

溝渕正季、慶應義塾大学出版会

2026.2.19  7:48 am

 歴史的背景を踏まえ米国の中東戦略を読み解いた書。米国がイラン攻撃を行うなか一読に値する書である。本書は、石油資源の安定確保、イズラエルの安全保障、イラク戦争、対テロ戦争などを軸に米国の中東戦略を分析する。米国の中東政策がどのような力学に則って展開されているかを明らかにする。タイトルは米国と銘打っているが、中東諸国(イラン、イラク、サウジアラビア、シリアなど)やロシア、中国の動きも併せて追っているので、中東情勢を教科書的にざっと知ることができる。イランの「前方防衛戦略」など寡聞にして知らなかったことも多く、役立ち感がある。
     
 筆者は米国の歴代政権の政策を精査する。本書を読むと、「アラブの春」が起こった時のオバマ政権の姿勢が、米国の中東における影響力と存在感、信頼性を大きく残ったことがよく分かる。さらに、極端で盲目的なイスラエル・サウジアラビア贔屓とイラン敵視を隠そうとしない傲慢で帝国主義的なトランプ政権が、中東地域での米国への不信感と嫌悪感を増大させた。
      
 米国主導の国際秩序に従属的だった中東諸国が今、自律性を追求し、多極的な外交を模索している。この米国の影響力の低下を、人権や民主主義に無関心なロシアや中国が突いているのが現在の構図である。特に中国は、経済的・技術的な関与を拡大し、例えば5Gネットワークや監視システムなどで中東諸国への影響力を増している。

書籍情報

アメリカの中東戦略とはなにか〜石油・戦争・同盟〜

溝渕正季、慶應義塾大学出版会、p.280、¥2970

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。