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横田英史の読書コーナー

インフレ・円安・バラマキ・国富流出

佐々木融、日経プレミアシリーズ

2026.2.13  7:47 am

 インフレ、円安、バラマキと、今まさに旬のキーワードについて、元日銀マンで為替の専門家が深掘りした書。円安の根本原因を明らかにするとともに、これから起こりうるシナリオと対応策を提示する。崖っぷちの日本経済の現状を分析するとともに、今後取るべき指針を示す。ちなみに著者は、「円は信頼を失い、取り戻せない瀬戸際にある。正直なところ、時すでに遅し」と真情を吐露する。的確な指摘の多い納得の新書である。
     
 他人事のような響きがある「失われた30年」が、実は失政や不作為のせいで「自ら失った30年」だったことがよく分かる。筆者は「失われた30年」の原因を、行き過ぎた円高が生じたときに、なぜ生じているかを分析して構造改革を進めなかったことに求める。円高を「投機筋のせい」「マーケットが悪い」として外部要因に押し付け、当局は実体経済から目を背けた。その結果、経済が取り返しのつかないほど歪んでしまった。
      
 筆者は構造改革を阻む要因として、終身雇用制や年功序列、硬直的な労働市場、企業売却に対するネガティブな姿勢、日本語の壁などを挙げる。このほか、人手不足の原因は人口減少よりも労働時間の短縮、インフレに対応するための政策は減税や補助金ではなく、供給を増やす政策を取るべきだと強調する。

書籍情報

インフレ・円安・バラマキ・国富流出

佐々木融、日経プレミアシリーズ、p.256、¥1100

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。