横田英史の読書コーナー
神と科学〜世界は「何」を信じてきたのか〜
ミシェル=イヴ・ボロレ、オリヴィエ・ボナシー、鳥取絹子訳、日経BP
2026.1.20 9:27 am
「創造者は存在する」対「世界は物質のみでできている(唯物論)」の対立に決着をつけることを試みた書。筆者は、科学的な知見などに基づき神(創造主)の存在は否定できないことを明らかにする。牽強付会と思える議論が散見するものの、知的好奇心を満足させてくれる書籍でお薦めである。560ページの大著で持ち運びに不便だが、行間・字間にゆとりをもたせ、空白をふんだんに使っているので、以外にサクサク読み進むことができる。
筆者は、アインシュタインやボーア、ディラック、ダーウィン、ガリレオなど数多くの科学者の証言や、科学の知見をもとに、創造主の存在を否定できないと断じる。欧米の書籍らしく、事実や発言を次から次へと畳み掛けながら持論を展開していく。読者は筆者に組み伏せられないように注意しないと、筆者のペースに乗せられてしまう。
出色なのは宇宙物理学の観点から創造主の存在を推測するところ。宇宙の始まりであるビッグバンはもちろん、「宇宙の熱的死という“終わりの物語”は“始まりの証拠”であり、作り手の存在が推定される」と論じる。「宇宙の熱的死」や「宇宙の微調整」の議論を知っただけでも本書を読んだ価値がある。評者は生物や細胞、脳、人体といった分野に興味を持っているが、その仕組みの巧妙さを知れば知るほど偶然とは考えづらく、不可思議な力の存在を否定できなくなる。筆者に全面的に賛同はできないものの、納得できる部分も少なくない書である。
ちなみに500ページ超の前半部のみが科学(宇宙物理学や量子物理学、生物学)に関係し、後半は宗教や歴史、哲学の話、さらには創造主の存在を否定する反対派への反論にページを割いている。後半部にはイエス・キリストの話、聖書の話、ヘブライ人、ユダヤ人の話、さらには1917年にスペインで起こった奇跡「ファティマの聖母」といった話が登場するなど、タイトルとのギャップが大きい。
書籍情報
神と科学〜世界は「何」を信じてきたのか〜
ミシェル=イヴ・ボロレ、オリヴィエ・ボナシー、鳥取絹子訳、日経BP、p.560、¥3080

























