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横田英史の読書コーナー

AI経営講座 スーパーエッセンシャル版

ンターナショナル新書/集英社インターナショナル、東京大学 松尾・岩澤研究室、PwC Japan グループ

2026.1.12  9:23 am

 東京大学大学院 松尾・岩澤研究室が主催し、PwC Japanグループなどによる社会人向け寄附講座「AI経営講座2025」(2025年1月~3月で全10回、社会人は3万円)のエッセンスをまとめた書。キャッチコピーは「AI×経営の未来デザインを描く」である。深みこそないが、社会人として最低限知っておくべき技術と経営のポイントを押さえている。ちなみにAI経営講座が2022年にスタートを切ったときの受講者は308人だったが、2025年には7000人近くに膨れ上がったという。
     
 技術面は松尾・岩澤研究室の担当だけあってAIエージェント、フィジカルAI、End-to-End、世界モデルといった最新の話題をキャッチアップしている。深みがなく物足りないのは、新書判なので仕方がないところだろう。本書をキッカケに他の書籍・雑誌・Webサイトなどで補う必要がある。経営の話はコンサルティング会社らしく、PwCが手際よくまとめている。AIを経営に適用するときに考えるべき、経営上のポイントやリスク、課題を知ることができる。
       
 本書を読んで感じるのは、AI経営はDXと同じ問題点を抱えるのではないかということである。DXは経産省の旗振りのもと喧伝されたが、結局はX(Transformaton)の部分が日本ではうまく進まなかった。Dのデジタイゼーションやデジタライゼーションでとどまり、変革につながる事例は多くなかった。実は経産省は2007年ころに「IT経営」を叫び、「ITは経営そのもの」として経営における全体最適の重要性を訴えた。施策として強力に推進したものの、企業の多くは部分最適にとどまった。そして同じ轍をDXでも踏んだ。IT経営からDX、さらにはAI経営と同じことがまた続くことを老婆心ながら危惧してしまう。
       
 この点はPwCも気づいており、「日本企業には変革をしていくための手法が浸透していない。変革そのものが実体のない曖昧なものとして捉えられ、専門家がいない構造に陥っている」と分析する。IT経営にせよ、DXにせよ、AI経営にせよ、日本企業にとって「言っていることは分かるが最初の一歩の出し方がわからない」のだろう。根深い問題である。

書籍情報

AI経営講座 スーパーエッセンシャル版

ンターナショナル新書/集英社インターナショナル、東京大学 松尾・岩澤研究室、PwC Japan グループ、p.224、¥1122

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。