Electronics Information Service

組込みシステム技術者向け
オンライン・マガジン

MENU

横田英史の読書コーナー

ぼくらがAIBOをつくった〜ソニー・ロボティクスの挑戦〜

黒川文雄、ラトルズ

2026.1.5  4:33 pm

 ソニーが1999年に発売した家庭向けエンターテインメントロボット(犬型ペットロボット)「AIBO」の開発物語。開発プロセスや設計思想、AI的仕組みなど、知られざる内容が多く読み応え十分である。初代AIBOを中心に最新のaibo(2018年に復活)まで、主要メンバーへの取材をもとに構成する。ソニーらしい尖った技術者たちの逸話は興味深い。内容のダブり感など改善の余地があるが、開発秘話の面白さが上回っている。ヒューマノイドロボットやフィジカルAI、自律移動ロボットなど、現在通じる話が詰まったお薦めの書である。
     
 AIBOには、標準インターフェースやアーキテクチャ、フレームワークといった設計思想が反映されている。ハードウエアはモジュール化され、各部位は標準インタフェース(はっきりは書いていないがUSBだと思われる)でデータをやり取りする。胴体や足、頭などの部位にワンタッチで分解できる。
      
 本書の帯に「ロボットに『心』を与えようとした人々の奮闘と革新」とあるが、AIBOの『心』の仕組みは寡聞にして知らなかった。AIBOはサブサンプション理論に基づいて設計され、単純な振る舞いモジュールを組み合わせて、複雑な知能的振る舞いを実現している。オーナーとの関係性によって成長の仕方が異なり、行動パターンが変化する。行動パターンが異なるので、オーナーはAIBOに飽きることがない。AIBOが心を持つように感じ、愛着につながる。
      
 本書は、AIBOの父・土井利忠(ワークステーションNEWS開発やCD開発でも知られる)のほか、プロジェクトマネージャの大槻正、技術リーダーの藤田雅博、デザイナーの空山基、開発責任者の影山浩二らを取り上げる。大賀典雄、出井伸之、ハワード・ストリンガーなど歴代経営陣に対する技術者たちの忖度のない評価は、「そうだろうな〜」と思わせるものばかりで面白い。とりわけAIBOの製品化をめぐって、開発責任者・土井利忠と公開メールでバトルを繰り広げた出井に対する評価は辛辣である。一方で、ソニーにおける土井の特異さもよく分かる。

書籍情報

ぼくらがAIBOをつくった〜ソニー・ロボティクスの挑戦〜

黒川文雄、ラトルズ、p.304、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。