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横田英史の読書コーナー

チームワークを科学する〜イノベーションを導くチームの作り方〜

堀井秀之・編、東京大学出版会

2025.12.13  9:49 am

 チームワークとは何か、パフォーマンスの高いチームワークとはどういったものか、イノベーションを生み出すチームワークの在り方などについて、データに基づいた研究成果を集めた書。チームワークのパフォーマンスを向上するための組織構造やチームメンバーの特性などについての研究成果を紹介する。行政組織におけるチームワーク、企業戦略を生み出すチームワーク、信頼を醸成するチームワーク、知識創造活動を生み出すチームワーク、リーダーシップが創発するチームワークなどを取り上げる。
     
 予想可能な研究結果が少なくないが、中には「へ〜」と驚くような指摘も散見される。このあたりが本書の価値だろう。
     
 例えば、心理的安全性がチームワークに与える“正”の影響が、変革型リーダーシップによって弱められる可能性。ここでいう「変革型リーダーシップ」とは、ビジョンの提示や個々のメンバーへのサポートなどを通して、組織やチームメンバーから高いモチベーションを引き出すことを指す。パフォーマンスの高いチームにとって不可欠に思えるが、これが心理的安全性による効果を打ち消す方向に働く。リーダーシップが強すぎることによって、個々のチームメンバーの自主的な創造を阻害してしまうのだ。
     
 チームメンバーの属性を多様化するだけでは、創造性の向上には繋がらない。多様なメンバーの視点がチーム内で共有され、相互理解が進むことで創造性は高まると説く。
     
 このほかチームワーク科学の今後の方向性としては、コミュニケーション科学や社会心理学と絡めた研究が重要になると説く。生成AIがチームの一員として機能するだけではなく、隠れたリーダーの役割を果たす可能性も示唆する。本書の取り上げるのは研究レベルの話が多いので、実践的で即効性のあるノウハウ本を期待すると。買ってガッカリするかもしれないので要注意である。

書籍情報

チームワークを科学する〜イノベーションを導くチームの作り方〜

堀井秀之・編、東京大学出版会、p.232、¥2970

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。