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横田英史の読書コーナー

マイコン・ウォーズ

田原総一朗、アカシックi文庫(Kindle版)

2025.12.2  9:45 am

 田原総一朗が、1981年当時のパソコンブームやOAブームの熱気を取り上げたノンフィクション。当時喧伝された「紙の書類や秘書がなくなる」「在宅で仕事ができるが」「リアルタイムでの翻訳が可能になる」「マイコンでショッピング」といった未来予想図は、現在に通じるところがあり実に興味深い。40年以上の時を経て、夢想が現実になったことになる。
     
 本書はパソコンだけではなく、日本における情報処理産業(人月商売のソフトウエア産業)や半導体産業の歴史、日米半導体摩擦、電電公社(DIPSと呼ぶ大型コンピュータを開発していた)対IBM、コンピュータ犯罪などに言及する。三和銀行 女子行員が端末を操作し1億3000万円を横領したコンピュータ犯罪、石川島播磨重工をスピンアウトして一世を風靡したコスモ80、ソードの椎名堯慶、CSKの大川功、SRAの岸田孝一など、懐かしい話や人物が次々に登場するのも良い。西和彦もパソコン黎明期のキーマンとしてたびたび登場する。
      
 本書が出版されたのは1981年。ベストセラーになったNECのPC-8001登場から2年後である。筆者は当時のビジネスシヨウやマイクロコンピュータショウの賑わいぶりを紹介しているが、前者は4日間で34万人の来場者が押し寄せたという。現在のCEATECが同じ4日間で10万人前後なので、凄まじい人気ぶりが伺われる。日本のIT黎明期を知ることのできるノンフィクションとしてお薦めである。紙の書籍は絶版だが、Kindle版を入手できる。

書籍情報

マイコン・ウォーズ

田原総一朗、アカシックi文庫(Kindle版)、p.116、¥770

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。