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横田英史の読書コーナー

民度〜分極化時代の日本の民主主義〜

善教将大、中公新書

2025.11.26  9:41 am

 「民度」という言葉の使用率、使用率の男女差や年齢差、教育水準の差などの調査結果に基づき、日本の民主主義、日本人の政治意識、日本社会の分断について論じた書。テレビや新聞、SNSなどが日本人の政治意識、投票参加、党派性、投票行動にどのような影響を与えたかを分析する。日本社会は、民主主義の前提となる寛容の精神が失われつつあり、分断の危機に瀕していると警鐘を鳴らす。米国をはじめ、世界各国でポピュリズムが台頭し、分断が深刻化するなか一読に値する書である。
     
 民度は党派性とかかわる概念となっている。人々は自身の持つ党派性に基づきながら、特定の人や地域の民主主義の度合いを判断したり、評価したりする際に民度という言葉を用いる。どのような政治的信念や党派性を支持あるいは拒否するかも、民度の高低の判断に関わってくる。
      
 例えば自民党支持層から見ると共産党支持層の民度は低く、共産党支持層から見ると自民党支持層の民度は低いということになる。党派性に基づく判断は民主主義を機能させるものではなく、むしろ後退させる引き金になると筆者は懸念を示す。
     
 若者についての分析は興味深い。若者層の能力に疑義を呈する姿勢を崩さない社会の在り方が、若者層のひいては日本の民度の低下をもたらしていると説く。若者の知識や能力が実態以上に低く見積もられている現状が、「自分の行動で国や社会を変えられる」と考える政治的有効性感覚の希薄化につながる。

書籍情報

民度〜分極化時代の日本の民主主義〜

善教将大、中公新書、p.256、¥1265

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。