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横田英史の読書コーナー

新しい階級社会〜最新データが明かす<格差拡大の果て>〜

橋本 健二、講談社現代新書

2025.10.30  9:32 am

 1980年前後に始まった格差拡大が固定化され、正規労働者階級とパート主婦の下に“アンダークラス”と呼ぶべき新しい階級が出来上がっていることを調査データに基づき明らかにした書。低賃金の非正規労働者が激増したことや、貧しい高齢者の増加が背景にあるとする。アンダークラスは就業人口の約14%を占め、貧困率は37%に達し家族をつくることもままならない。子孫を残すことは少なく、アンダークラスの連鎖は起こっていないという。日本社会の状況を定量的に裏付けた書で一読に値する。
      
 アンダークラスは以下のような特徴を持つ。孤立しており、不健康でメンタル面での問題を抱える人が少なくない。他の階級(資本家階級、新中間階級、正規労働者階級、パート主婦)とは完全に切り離されている。政治への関心や参加は他の階級に比べて極めて希薄である。では、どういった人がアンダークラスになるのか。女性は男性の約2倍の確率でアンダークラスになりやすい。学校を出てから就職するまでに1か月以上の空白がある場合も、アンダークラスになる傾向があるという。
     
 筆者はアンダークラスを生む背景に、自己責任論を振りかざし、格差解消の必要性を否定する「新自由主義右翼」の存在を挙げる。原子力発電を容認し、性的マイノリティの承認を拒否し、軍隊を持つことを強く支持し、外国人に対する排外主義的な態度をとり、豊かさが際立つ男性中心のクラスターが新自由主義右翼の特徴だと、筆者は断じる。

書籍情報

新しい階級社会〜最新データが明かす<格差拡大の果て>〜

橋本 健二、講談社現代新書、p.336、¥1320

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。