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横田英史の読書コーナー

スティグリッツ 資本主義と自由

ジョセフ・E・スティグリッツ、山田美明・訳、東洋経済新報社

2025.10.25  9:30 am

 ノーベル経済学賞受賞の経済学者が、新自由主義や米国右派、共和党の政策や思想を徹底的に批判した書。トランプ政権が誕生した背景や、資本家や富裕層にとって有利な新自由主義の搾取の構造を解き明かす。米国の自由と民主主義は危機に瀕していると警鐘を鳴らす。400ページの大著だが、あらゆる角度から新自由主義と米国右派を叩く徹底ぶりは凄まじい。
     
 新自由主義は、少数(富裕層や大企業)の自由のために多数を犠牲にしていると繰り返し断じる。不平等を引き起こし、利己主義や不正を生み出し、視野や価値観を狭めている。犠牲になった「我々は99%」が、社会に不平を抱きポピュリズムの台頭につながった。これまでに現れた扇動政治家よりも、さらに酷い人物が登場する危機が身近に迫っているとする。
     
 筆者がソーシャルメディアに向ける目は厳しい。大手プラットフォームはより多くのデータをかき集め、ライバル企業に対して競争優位に立つ。他の人々の役に立とうとする意志も能力も示そうとしない。何の説明責任もないまま、誤情報や偽情報を拡散し、民主主義を損なっていると糾弾する。本書を読むと、リベラルから見た米国の政治、経済、社会の現状を知ることのできる。ちなみに筆者の理想と考えるのは、21世紀版の社会民主主義(再生された社会民主主義)や北欧型福祉国家である。

書籍情報

スティグリッツ 資本主義と自由

ジョセフ・E・スティグリッツ、山田美明・訳、東洋経済新報社、p.512、¥3080

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。