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横田英史の読書コーナー

アメリカの新右翼〜トランプを生み出した思想家たち〜

井上弘貴、新潮選書

2025.10.8  9:25 am

 トランプ政権を思想的に支える米国の新右翼を分析した書。新右翼を牽引する9人を取り上げる。IT系(テック右派)ではピーター・ティール、イーロン・マスク、マーク・アンドリーセン、白人ナショナリストのカリスマと言われるリチャード・スペンサー、ヴァンス副大統領の盟友と言われるパトリック・デニーン、フランスの極右思想家R・カミュなどである。彼らについて、そのバックグランドと思想を明らかにする。本書を読んでもトランプの愚かな行動原理はさっぱり分からない。キリスト教をバックグランドにした米国のナショナリストが理解不能な存在であることは確かである。
      
 筆者は、リベラルな民主主義を劣勢に追い込んだ新右翼(テック右派、宗教保守、ネオライト)が社会をどのように作り変えようとしているのかを明らかにする。彼ら彼女らは、ナショナリズムを重視し、キリスト教価値を重んじ、テクノロジーを受け入れ、極右との親和性を強める。テクノロジーと愛国的なナショナリズムをつなぎ合わせる。黒人を背後で操るユダヤ人という陰謀論の構図に囚われているところにも特徴があるという。米国の新右翼が理想の国家とするは、キリスト教の価値感を擁護した政策を推進するハンガリーというのは実に興味深い。
    
 筆者は、右であれ左であれ、穏健であることが罪になりつつあるのが米国の現状だと断じる。対立する価値観や利害の間を可能な限り擦り合わせを試みる態度は利敵行為と見なされ、敵なのか味方なのかはっきりしない者は胡散臭い目で見られる米国の社会は自滅に突き進んでいると感じるのは乗車だけだろうか。

書籍情報

アメリカの新右翼〜トランプを生み出した思想家たち〜

井上弘貴、新潮選書、p.208、¥1705

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。