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横田英史の読書コーナー

こうして、世界は終わる〜すべてわかっているのに止められないこれだけの理由〜

ナオミ・オレスケス、エリック・M・コンウェイ、渡会圭子・訳、ダイヤモンド社

2025.2.13  11:41 am

 世界崩壊の300年後から現在を振り返り、「人類は、いつ、どのように間違って破滅に至ったか」を論じた書。未来の歴史研究家が、過去を振り返る体裁をとる。西洋文明(1540年〜2093年)は、予測されていたにもかかわらず崩壊を止められなかったとする。実際、科学者は崩壊を予測しており、回避するノウハウも持っていた。しかし、自分の専門領域以外に踏み込んではいけないという規範にとらわれ、声を上げることができなかったと批判する。
    
 2015年の書だが、現在にも十分に通用する内容である。むしろ刊行から10年を経て、確度が高まった感さえある。すでに絶版になっているので、電子版(なぜかKindle版は存在しない)あるいは図書館から借りて読むことになるが、一読に値する。
    
 西洋文明の暗黒期は1988年から始まる。地球温暖化が進み、洪水やハリケーン、熱波、海面上昇、山火事が続発する。人類がいま目にしている世界が描かれている。現在進行形で、崩壊に向かってひた走っている感がある。人類には崩壊の予測もできたし、回避するノウハウもあった。しかし実証主義と市場原理主義のイデオロギーにとらわれて身動きできなかったと分析する。2009年が崩壊を食い止めることができた最後のチャンスだったと著者は語る。

書籍情報

こうして、世界は終わる〜すべてわかっているのに止められないこれだけの理由〜

ナオミ・オレスケス、エリック・M・コンウェイ、渡会圭子・訳、ダイヤモンド社、p.152、¥1540

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)

1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。

*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。