横田英史の読書コーナー
生成AIの論点〜学問・ビジネスからカルチャーまで〜
喜連川優・編、青弓社
2024.7.16 10:40 am
テクノロジーやアプリケーション、法的な問題など、11の切り口で生成AIを分析した書。日本学術会議が2023年9月に開催したシンポジウム「生成AIの課題と今」を加筆、修正の上で書籍化したもの。動きの速い分野に対応するために、シンポジウムから書籍執筆時点までの新展開を加筆で補う。各分野の専門家による、簡にして要を得る解説は役立ち感がある。巷にあふれるノウハウ本とは一線を画す。
大きく3部構成をとる。AI研究者や実業家、漫画家、古典籍研究者、法学研究者などが、第1部ではテクノロジー、第2部では利活用、第3部では法的問題に言及する。分野によって出来不出来があるものの全体に悪くない。特筆すべきは、利活用のセクションである。画像生成AIとその利活用、生成AIとマンガ制作(制作における生成AIのリアル)、画像生成AIを用いたブランドの創出は、「へ〜」と思わせるような具体的な内容が豊富で読み応え十分である。
例えば漫画家(シナリオ・演出担当)は、「生成AIの問題点とされるハルシネーション(幻覚)は創作に向いている」と語る。ブランディングについても、人間は忖度など同調圧力や作業量に対する配慮、金銭圧力に晒される。一方の生成AIには、心理的安全性があり、豊富な試しデザインが可能、外れ値や意外性からの発展が可能とする。
このほか生成AIの活用と懸念に対する対策、言語生成AIの弱点(なぜChatGPTは計算が苦手なのか)といった章も興味深い。シンポジウムのプレゼンがベースになっていることもあって、大きめな図や写真をふんだんに使う。文章は図や写真のキャプション的な役割で、すいすい読み進むことができる。2024年5月時点の生成AIの状況を知ることができ、生成AIについての情報を整理できる好著である。
書籍情報
生成AIの論点〜学問・ビジネスからカルチャーまで〜
喜連川優・編、青弓社、p.200、¥2640

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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