横田英史の読書コーナー
ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか〜民主主義が死ぬ日〜
ベンジャミン・カーター・ヘット、寺西のぶ子・訳、亜紀書房
2021.10.16 11:44 am
ワイマール共和国の成立から崩壊、ナチス党の一党独裁に至る過程を丹念に追ったノンフィクション。ナチスによる独裁に加担した政治家や軍人の打算、虚栄心、名誉欲、復讐心、呪縛をキッチリと描いており読み応えがある。特に、ヒトラー政権の誕生に至る瞬間を描写した最後の100ページほどは見事である。世界史の教科書で断片的に知っていた史実をストーリーとしてつなぎ合わせて理解できる。
筆者は、「誰が民主主義を終わらせるのか」について貴重な視点を与えてくれる。ヒトラーを生んだ時代背景には、グローバリゼーション、第一次世界大戦後の難民問題、ドイツ社会の階級・宗教・民族における分断があったとする。今の時代は、「ごく限られた首脳が異例の権力をふるい、個人の目的や思いつきに重きが置かれ」、1930年代と酷似しているとする(原書はトランプ時代の2018年発行)。
ナチの独裁を生んだ当時のドイツは、「この高度な文明国で640万の有権者が最も粗野で不誠実で下品ないかさま」を支持するとは誰も考えなかった。しかしヒトラーは分断した社会を背景に、意図的な偽り、社会に広がる非合理性への関心、そして非合理性に耽りたいという国民の欲望を統合した。本書を読むとトランプ時代の米国との類似性を強く感じざるを得ない。米国を救った一因がニューヨーク・タイムズをはじめとする真っ当なメディアと多様性だったことも分かる。
書籍情報
ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか〜民主主義が死ぬ日〜
ベンジャミン・カーター・ヘット、寺西のぶ子・訳、亜紀書房、p.411、¥2420

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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