横田英史の読書コーナー
中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係
益尾 知佐子、中公新書
2020.5.17 5:46 pm
新型コロナに乗じた海洋行動や特異な言動など、世界各国との軋轢が止まない中国の行動はどのような背景に基づくのかを論じた書。政治や社会の歴史的な経緯を踏まえるとともに、北京大学留学などで得た“肌感覚”を利用しながら中国外交の原理を明らかにする。歴史的な経緯で中国に染み付いた「被害者意識」など、どこかで聞いた話が登場するが、全体としてスッキリした論理構成で腑に落ちる内容である。今後の中国外交の方向性についても言及する。タイムリーな出版で多くの方にお薦めできる。
毛沢東や鄧小平、習近平といった指導者の評価、民族特有の家族観、社会の秩序意識、共産党一党独裁体制下の資本主義という政経分離のキメラ体制など、内容は充実している。規則性と論理性が欠如して支離滅裂に思える中国共産党の対外的な行動だが、国内力学が対外行動を決定づけることを明らかにする。国際関係は国内競争を有利に進めるためのリソースの一つと位置づける。
興味深いのは、家父長による支配が強い中国の伝統的家族観である。問題が深刻であればあるほど、指導者の意向を忖度する度合いが強まり、ボトムアップによる問題解決の可能性が低くなる。中国人は国内的な潮流を観察し、それに乗って動く傾向が強い。この性向は伝統社会に根づいており、一朝一夕では変わらないとする。
書籍情報
中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係
益尾 知佐子、中公新書、p.306、¥1012

横田 英史 (yokota@et-lab.biz)
1956年大阪生まれ。1980年京都大学工学部電気工学科卒。1982年京都大学工学研究科修了。
川崎重工業技術開発本部でのエンジニア経験を経て、1986年日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。日経エレクトロニクス記者、同副編集長、BizIT(現ITPro)編集長を経て、2001年11月日経コンピュータ編集長に就任。2003年3月発行人を兼務。
2004年11月、日経バイト発行人兼編集長。その後、日経BP社執行役員を経て、 2013年1月、日経BPコンサルティング取締役、2016年日経BPソリューションズ代表取締役に就任。2018年3月退任。
2018年4月から日経BP社に戻り、 日経BP総合研究所 グリーンテックラボ 主席研究員、2018年10月退社。2018年11月ETラボ代表、2019年6月一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事、現在に至る。
記者時代の専門分野は、コンピュータ・アーキテクチャ、コンピュータ・ハードウエア、OS、ハードディスク装置、組込み制御、知的財産権、環境問題など。
*本書評の内容は横田個人の意見であり、所属する企業の見解とは関係がありません。
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